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不動産の鑑定評価って何?(6)不動産鑑定ではどの様に不動産を評価するか②

2022/12/27 火曜日

 こんにちは、埼玉県で独立自営の不動産鑑定士、矢口真実です。

前回のブログで不動産鑑定においては「評価対象となる不動産について将来のストーリーを描く」という話を致しました。

それでは、その描いたストーリーに則り、どの様な価格の算出過程により評価額という結論に至るのか?今回はそれについてのお話となります。

 私たちが、ある不動産を鑑定する際、その価格の算出に二通りの観点からアプローチを行うことが一般的です。

①一つはその物件の「物理的な状態」を作り上げることにどの程度のコストを要するか?という視点

②もう一つはその物件を利用することによって得られるだろう「儲け(収益)」から逆算する視点

例えばある土地があり、5,000万でそれを購入し、アパートを建築したとします。

この例で建物の建築費の総額が5,000万だったとするとこの物件が出来上がるまでに要したコストは5,000万(土地)+5,000万(建物)で1億円になります。従って①の視点から見たこの物件の価値は1億円ということになります。

その後、このアパートを借りる人が現れ、首尾よく満室になり、月額100万円の賃料収入を得られることになったと仮定します。

その賃料収入に目をつけた投資家が、この物件の購入する価格を判断する際は、当然その賃料収入から逆算することになります。例えばこの人が「利回りは粗利で15%は見たいなあ。。。」と考えたとすると、物件の価値は以下の通りとなります。

月額100万×12=1,200万(年額賃料)

物件価格に対して利回りを乗じると年額賃料になるので、②の視点から見た物件価格は賃料から逆算して1,200万÷15%=8,000万という判断になります。

不動産鑑定評価では①の視点から見た物件価格は鑑定評価の用語では「積算価格」、②の視点からの価格を「収益価格」という用語で表現されます。

積算価格は物件に要した「コスト回収」からアプローチした売主側から見た「売りたい価格」であり、逆に収益価格は買主側の視点で物件を利用して得られる「儲け」に着目した「買いたい価格」と言えるのではと思います。※

※実際の不動産鑑定評価では積算価格を求める際は、通常土地の価格は周辺の実際に取引された事例の取引価格を基に算出し、建物価格は新築想定の価格から経過年数などから判断した減価額を引いて算出、それを合算します。

また収益価格は実際の鑑定評価では上記記載の年額賃料から、ランニングコスト(維持管理費、修繕費、固定資産税など)を引いて、更に将来の大規模修繕に要する積み立て費用、敷金や保証金の運用益なども考慮した「純収益」(Net Cash Flow)という金額を算出し、これに対応する利回りで割り算して一体として価格を算出します。

一般的に特に賃貸などに供されていない(不動産の所有者=利用者)住宅や工場、事務所ビルなどを評価する場合は①の価格を中心として価格を算出します。この様な案件は、この積算価格の考え方により得られた価格により実際の取引相場も形成される傾向にあります。

また当たり前の話ですが、物件が賃貸に供されている場合は、それを買いたい人は、その物件による投資の「採算」を考えて、平たく言うと「お金儲けのために」購入を考えていて、その観点から他の物件との比較検討を行うことになり、その過程の中で価格水準が出来上がっていくことになるので、不動産鑑定評価においても②の価格を重視して評価書を作ることになる訳ですね。

なお、その不動産が何某かの事業に利用されている場合(パチンコ店、老人ホーム、病院、ホテルなど)は一般的に建物の仕様が、その事業を行うために作られたものであり、物件を買う人も、その事業が継続されることを前提とする場合が多いため、その事業により、設けたお金のうち、不動産に帰属する部分がどの程度かを判断して物件の価格を算出する方法が用いられます。