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建築費の高騰と不動産市場(3)

2026/4/14 火曜日

こんにちは。

埼玉県を中心に不動産鑑定を行っております、不動産鑑定士の矢口真実です。

先日発表された地価公示価格を見ると、私の住む埼玉県南東部においても、多くの地点で上昇の判断がなされていました。

一方で、物価上昇を考慮した実質賃金が下落する中、駅近で利便性の高いエリアであればまだしも、

バス便圏のようなエリアまで上昇している点について、違和感を感じていました。

実際、厚生労働省の毎月勤労統計などを見ても、実質賃金はマイナス圏での推移が続いており、

多くの人にとって購買力が大きく高まっているとは言えない状況にあります。

そう考えると、地域における新築戸建住宅の総額(グロス)は、賃金が大きく伸びない中でどこまで上昇し得るのか、

また建築費の上昇に伴い建物価格が上がれば、その分土地価格には下押し圧力がかかるのではないか、といった疑問も浮かんできます。

こうした一見すると違和感のある現象は、「人々の収入が増えているから」というよりも、供給が限られる中で、

価格についていける一部の需要者によって取引が成立している結果と推測しています。

だからこそ、実際の成約価格だけを見ると「このエリアは上がっている」と感じる一方で、

どこかに「本当にそうなのか?」という引っかかりを覚える場面があったかと思います。

その背景には、建築費の上昇や人手不足といった現実的な制約に加え、都心からの需要のにじみ出しなど、

今の時代ならではの流れがあります。価格は確かに動いているものの、その内側では「買える人」と「そうでない人」との間に、

少しずつ距離が広がっていると想像しています。

これからの不動産市場を見るうえでは、表に見える価格の動きだけでなく、その価格がどのような層によって支えられているのか、

そしてその状態が持続可能なものなのか、といった視点がより重要になってくるかもしれません。

また今後は、新築の供給だけに頼るのではなく、既存の建物をどのように活かしていくかといった発想が、これまで以上に求められていくかと思います。